医療費控除とは?計算方法や確定申告における手続き方法を紹介

  • 遺産相続・確定申告
医療費控除とは?計算方法や確定申告における手続き方法を紹介

確定申告において医療費控除の申告をすると、税負担の軽減や払い過ぎた税金の還付を受けられる場合があります。手続きを行うことで、意外と大きな額が還付されるというケースもあるため、一度計算してみてはいかがでしょうか。

本記事では、医療費控除とはどのような制度であるかを紹介し、適用要件や計算方法、確定申告における手続きについて解説します。

確定申告の医療費控除とは

確定申告には、要件を満たすことで所得から一定金額を引き算できる「所得控除」があります。

医療費控除とは所得控除のひとつで、該当する年の医療費が定められた金額を超えている場合、所得金額から医療費の一部を引くことができる制度です。医療費控除を利用するには、確定申告での手続きが必要です。会社に勤めている人も「年末調整」のみでは対応できないため注意しましょう。

また、医療控除と似た制度に、セルフメディケーション税制があります。疾病予防や健康のための取り組みを行っている場合に受けられる特例です。セルフメディケーション税制を受ける場合は、併用して医療控除を適用することはできません。どちらを利用するか、控除額の計算を行って検討しましょう。

医療費控除の適用要件

申請する医療費に医療費控除を適用したい場合、いくつかの要件を満たしていることが必要です。対象者や対象金額といった医療費控除の適用要件を解説します。

医療費控除の対象者

医療費控除の対象者は、税金を納める本人自身と配偶者、そして親族のうち「生計を一にする人」です。生計を一にするというのは「共通の生活費で生活をしている」と言えばわかりやすいでしょう。

例えば、大学生の子どもが一人暮らしをしていて、親が学費や生活費を送金しているケースでは、同じ家で生活をしていなくても「生計を一にしている親族」として認められる場合が多いようです。

一方、親が老人ホームに入っているなどのケースは注意が必要です。子どもが日用品を提供していても、施設の入居費用や食事代が親の財産から支払われていると、同一の生計とは認められない場合があります。

医療費控除の対象期間

医療費控除の対象期間は、確定申告で申請する該当年の1月1日から12月31日です。

期間内に実際に支払った金額が対象となるため、未払いの医療費は含まれません。反対に、前年分の支払いが対象期間にあった場合は、控除対象になります。

医療費控除の対象になるもの

医療費控除の対象となるものは、病院や歯科医院で医療を受ける際にかかった費用です。治療費や診察費、治療に必要な物品の購入費に加えて、通院や入院にかかった費用も控除対象となります。一般的な支出の水準は病状に応じて想定されているため、水準を大幅に超えた高額な治療や、特殊な内容の治療については、対象にならない場合があるため注意しましょう。

医療機関で施術を受けても、治療行為でないものは対象外です。すなわち、美容を目的とした整形や歯の治療、リラクゼーションのためのマッサージ、異常無しと診断された健康診断や人間ドックの費用などは対象になりません。

ただし健康診断や人間ドックは、疾病が発見された場合、続けて治療を行えば控除の対象になります。一定の基準を満たせば、特定保健指導やメタボ健診などの特定健診も対象に含まれます。

交通費も対象になりますが、基本的には、公共交通機関である電車やバスなどの運賃が控除対象です。タクシー代や高速道路の利用料金は、深夜や緊急時といったやむを得ない事情がある場合に限り対象となります。

医療費控除の対象金額

医療費控除の対象は、実際に支払った医療費の合計金額で、医療費補填金は含まれません

医療費補填金とは、保険金などで補填される費用です。具体的には、健康保険で支給される高額療養費、出産育児一時金、民間生命保険の医療保険による給付金などを指します。

医療費控除額と還付金の計算方法

医療費控除額と還付金額は、所得金額によって計算の仕方が異なります。計算方法の手順を4つの段階に分けて詳しく解説します。

1年間の医療費を計算

まずは1年間の医療費について合計額の算出が必要です。自分や対象となる家族の医療費について、該当する年の1月1日から12月31日までの医療費を、医療費通知や領収書などを元に計算しましょう。

医療費控除額の算出

次に、医療費控除額を算出しますが、所得金額によって計算方法が異なるため注意が必要です。所得金額とは、給与所得者の場合、給与の収入金額から「給与所得控除額」を差し引いた金額です。

医療費控除額は、1年間で実際に支払った医療費から医療費補填金を引き、さらに「所得金額の5%」か「10万円」のどちらか小さい方を差し引いて算出します。

「所得金額の5%」が「10万円」になるのは所得金額200万円の時であるため、計算式は下記のように分けられます。

  • 所得金額が200万円未満の場合
    「医療費控除額」=「実際に支払った医療費」ー「医療費補填金額」ー「所得金額の5%」
  • 所得金額が200万円以上の場合
    「医療費控除額」=「実際に支払った医療費」ー「医療費補填金額」ー「10万円」

所得税率の確認

所得税率も所得金額によって異なるため、適用される所得税率を確認をしましょう。現在の所得税率は下記の表の通りですが、最新情報は国税庁のホームページなどでご確認ください。

所得金額(1,000円未満切り捨て)

税率

1,000円~1,949,000円

5%

1,950,000円~3,299,000円

10%

3,300,000円~6,949,000円

20%

6,950,000円~8,999,000円

23%

9,000,000円~17,999,000円

33%

18,000,000円~39,999,000円

40%

40,000,000円以上

45%

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

還付金額を計算

医療費控除額に該当する所得税率をかけ合わせた金額が還付金額です。

「還付金額」=「医療費控除額」×「所得金額に対応する所得税率」

所得金額が400万円で所得税率が20%、医療費控除額が20万円という場合であれば、

医療費控除額20万円×所得税率20%=4万円

となるため、還付金額は4万円という計算になります。

ただし、実際の還付金は、源泉徴収税などですでに収めた税金と、実際に収めるべき税金額の差額です。個人事業主や自営業で源泉徴収税を納めていない場合など、還付金が無い場合もあります。医療費控除以外に受けている控除の種類などでも金額が変わるため、注意してください。

医療費控除を受けるための手続き

医療費控除を受けるためには、確定申告にて定められた書類の提出が必要です。医療控除を受けるための手続きについて、必要書類や書き方を解説します。

医療費控除の明細書

2017年分以降の確定申告では、医療費控除の適用を受ける際に「医療費控除の明細書」が必要です。医療費控除の明細書は国税庁のホームページから入手できます。

参考:A1-1 申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁

医療費控除の明細書には、「1.医療費通知に記載された事項」「2.医療費(上記1以外)の明細」「3.控除額の計算」を記入する欄があります。

「1.医療費通知に記載された事項」は、医療費通知の記載に従って、自己負担額の合計と実際に支払った医療費の金額、医療費補填金額を記入しましょう。

医療費通知記載以外の医療費がある場合は、「2.医療費(上記1以外)の明細」に記入します。通院の運賃や自由診療の治療費なども、この欄への記入で申告が可能です。領収書を添付する必要はありませんが、税務署から提出を求められる可能性はあります。確定申告期限から5年間は保存しましょう。

「3.控除額の計算」は前述の医療費控除額の算出と同様の計算です。書類の案内に従って記入してください。「G」の医療費控除額は確定申告書にも転記が必要であるため、控えておきましょう。

確定申告書

確定申告書の用紙も国税庁のホームページで入手できます。

参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁

医療費控除を確定申告書に反映させるためには、申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」㉗欄の「医療費控除」の欄への記入が必要です。医療費控除の明細書に記入した「G欄」の数字を転記してください。区分欄は記入が無くても大丈夫です。

2020年以降の確定申告書は、申告書第二表には医療費控除に関する記入欄がありません。しかし、2019年以前は第二表にも記入すべき項目があるため、さかのぼって申告する際は記入漏れのないように注意してください。

源泉徴収票

会社に務めている場合、確定申告書の記入欄に源泉徴収票の情報を転記する必要があります。勤め先で受け取った源泉徴収票を見ながら、給与の支払金額や所得控除額、源泉徴収額などを記入しましょう。源泉徴収票自体を提出する必要はありません。

医療費通知

医療費通知は加入している保険から発行される書類で、受けた医療の内容が合っているかといったことなどを確認できます。ただし医療費の内訳は、年の途中までのものしか記載されていない場合もあるため、注意が必要です。記載のない医療費を申請したい場合は、領収書などを元に「医療控除の明細書」の明細欄に記入しましょう。

本人確認書類

確定申告を行うためには、申告者の本人確認書類が必要です。配偶者や親族の書類は必要ないため、本人のもののみ用意しましょう。

本人確認書類として認められているのは、「マイナンバーカード」または「マイナンバーの確認書類と、番号の持ち主であると証明できる身元確認書類」です。マイナンバーカード1枚を用意するか、通知カードなどのマイナンバーを確認できる書類に運転免許証などの身元確認書類を添える形で用意してください。

本人確認書類は、確定申告会場の窓口で提示を求められます。郵送で確定申告を行う場合は、写しを添付書類の台紙に貼って送付します。

まとめ

医療費控除額や還付金額の計算は、手順を理解すれば簡単に算出が可能です。自分の医療費が要件を満たす金額に達していないと思っていても、家族の医療費や交通費などを加えると、医療費控除を適用できるケースもあります。税負担の軽減や税金の還付につながる可能性もあるため、ぜひ計算してみてください。

執筆年月日:2024年10月

※内容は2024年10月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。

記事一覧に戻る