ガルバリウム鋼板とは?外壁に使用するメリット・デメリットを紹介
ガルバリウム鋼板を屋根材ではなく外壁材として使う場合、メリットやデメリットなどをしっかりと理解しておくことが必要です。ガルバリウム鋼板の特性を深く知らずに使用すると、建築後に「こんなはずではなかった…」と後悔してしまうことがあります。そのため、ガルバリウム鋼板を外壁材として選択する場合は、メリットやデメリットなどを把握することが大切です。
本記事では、建築資材として使われるガルバリウム鋼板について、外壁材として使用する場合のメリット・デメリットをお伝えするとともに、工事費用やメンテナンスについて解説します。
※ガルバリウム鋼板は、「日本製鉄株式会社」の登録商標です。
ガルバリウム鋼板とは?
ガルバリウム鋼板とは、ガルバリウムでメッキした鋼板のことで、「アルミ亜鉛合金メッキ鋼板」と呼ばれることもある金属素材の一つです。粘り強さと硬さのバランスが良く、加工性が高いという特性があります。
ガルバリウムとは、アルミニウム、亜鉛、シリコンの合金のことです。鋼板は、鉄に炭素やマンガン、リン硫黄などを加えて、強度や靭性を高めた素材を指します。鉄板と呼ばれることもありますが、厳密には鋼板と鉄板は同じではありません。
ちなみに、金属鋼板の一つであるトタンは、亜鉛でメッキした鋼板のことです。屋根に使用される傾向にありますが、外壁に使用されることもある素材です。トタンはメッキにアルミニウムを使用していません。そのため、ガルバリウム鋼板はトタンと比較して、錆びにくく耐久性があるといわれています。
ガルバリウム鋼板を外壁に使うメリット
ところで、金属サイディングという言葉をご存じでしょうか。サイディングとは外壁パネルのことです。トタンやアルミなど建物に使われる金属製の外壁材は、金属サイディングと呼ばれます。
金属サイディングの他に、窯業サイディングと呼ばれる外壁材があり、これはセメントに繊維質を混ぜたものです。ここでは、ガルバリウム鋼板とその他の外壁素材を比較した際の、ガルバリウム鋼板を外壁に使うメリットについてお伝えします。
耐用年数が長い
ガルバリウム鋼板は、他のサイディングと比較して、耐用年数が長いといわれています。窯業サイディングよりも耐用年数が長い傾向にあり、トタンの耐用年数の数倍にもなります。
ガルバリウム鋼板は、製品によって耐用年数は異なりますが、一般的には20年を目安にメンテナンスを行うと、より長く使用可能です。窯業サイディングは10年程度でメンテナンスをしなければなりません。そのため、外壁メンテナンスのコストを抑えられる点は、ガルバリウム鋼板のメリットといえるでしょう。
錆に強い特性
ガルバリウム鋼板を使った外壁は、他の金属素材よりも錆に強い特性があります。ただし、全く錆びないというわけではなく、トタンなどと比較して錆に強いということです。
例えば、亜鉛でメッキしたトタンを外壁に使用した場合と比較すると、耐久性は3~6倍にもなるといわれています。アルミや亜鉛、シリコンを使った合金でメッキしたガルバリウム鋼板は錆に強い特性があることから、メーカーによっては長期間の保証をつけているところもあります。
軽量で耐震性に優れている
軽量素材の外壁材は、耐震性に優れているといわれています。理由は、建物にかかる負担が軽減されるからです。
人によっては、建物を強化するために、頑丈な外壁材を選択する場合もあるでしょう。しかし、耐久性の高いものは、その分、重くなる傾向にあります。重量のある外壁材を使用することは、建物への負担を増加させるため、地震による倒壊のリスクが高まるでしょう。
ガルバリウム鋼板の外壁材は、耐久度が高く軽量であるため、そういったリスクを軽減できます。
断熱性が高い
ガルバリウム鋼板を選ぶ時は、断熱材と一体となっているかを確認しましょう。断熱材が取り付けられていないガルバリウム鋼板は、金属だけの外壁材となるため、断熱性が低くなります。
しかし、断熱材と一体になっているガルバリウム鋼板は、断熱機能を備えることで、金属素材の弱点である断熱性や遮音性を補うことができます。結果として、ガルバリウム鋼板の外壁材一つで、多くの機能を有することができるでしょう。
断熱加工によって外壁材としてのコストは上がりますが、夏の暑さや冬の寒さ、外の音や室内の音漏れなどを避けられる点は、断熱加工をしたガルバリウム鋼板の外壁材を選ぶメリットといえます。
デザイン性が高い
ガルバリウム鋼板の外壁材は、シンプルでシックなデザインが特徴です。モダンなテイストの外壁は、都会にマッチするだけでなく、自然の多い風景にも合わせられます。
ガルバリウム鋼板は、スタイリッシュでモダンなデザインの家を建てたい人におすすめの外壁材です。
ガルバリウム鋼板を外壁に使うデメリット
続いて、ガルバリウム鋼板を外壁に使うデメリットについてみていきましょう。
キズや凹みが付きやすい
ガルバリウム鋼板はとても薄い鋼板を使用しているため、外からの衝撃に弱い特性があります。そのため、キズや凹みが付きやすいのがデメリットです。
一度付いたキズや凹みは、元に戻すことができません。キズが原因で錆が広がってしまうこともあるため、公園や学校の校庭に近い場所に家を建てる場合や、車庫の周りに使用する場合は、よく検討した方がよいでしょう。
ただし、小さなキズが付いた場合は、その部分だけ塗装を施すといった対応で、錆が広がるリスクを防げます。リスクを把握し納得したうえで、ガルバリウム鋼板を選択することが大切です。
なお、凹みのリスクがあるものの、デザイン性や機能性の部分で、どうしてもガルバリウム鋼板の外壁を使用したい場合は、厚みのある製品や断熱材が一体となっているものを選ぶとよいでしょう。
遮音性(防音性)が悪くなる場合がある
前述した通り、ガルバリウム鋼板の外壁材には、断熱材が一体になっているものとそうでないものがあります。ガルバリウム鋼板はとても薄くて軽量な外壁材のため、単独のものは遮音性(防音性)が悪くなる場合があります。遮音性を高めたい場合は、断熱材が一体となっているものを選びましょう。
ただし、ガルバリウム鋼板の取り扱いには、専門技術を持った人が必要です。技術力が未熟な施工会社が行った場合、断熱材一体型のガルバリウム鋼板であっても、十分に遮音対策ができないことがあります。ガルバリウム鋼板を選ぶ際には、口コミや施工実績を確認するなど事前にリサーチをしましょう。
他の外壁材より割高
ガルバリウム鋼板を家の建築に使用する場合、断熱加工による機能性アップが欠かせません。加えて、施工には専門の技術を持った人が必要です。そのため、窯業サイディングなど他の外壁材よりも、材料費や施工費用が高くなる傾向にあります。
初期費用が比較的高くなるのは、ガルバリウム鋼板の外壁材を使用するデメリットといえるでしょう。ただし、耐久性や断熱性、メンテナンス頻度などをふまえると、トータルコストが抑えられる場合もあります。ガルバリウム鋼板は他の外壁材より割高ではありますが、家の建築では長期的な視点でコストを考えることが大切です。
ガルバリウム鋼板を使用した外壁工事費用
ガルバリウム鋼板を使用した外壁工事の費用は、商品によって異なります。
木造2階建てで外壁面積が170平方メートルの家を建てる場合、断熱材が取り付けられていないガルバリウム鋼板は、材料費込で1平方メートルあたり約6,000円です。断熱材が一体となったものは、材料費込で1平方メートルあたり約9,000円となっているため、トータルで約50万円ほど差があります。
新築とリフォームでも費用は異なり、新築時は窯業サイディングと比較して1.2~1.4倍のコストがかかるといわれています。リフォーム時の外壁塗装では、2.5~3倍といわれており、他の外壁材と比較して割高になりやすいです。
ガルバリウム鋼板を選ぶ際の注意点
ガルバリウム鋼板を外壁材に使用する場合は、メリットやデメリットを把握することに加え、注意点についても知っておく必要があります。ここでは、ガルバリウム鋼板を選ぶ際の注意点についてお伝えします。
事前のガルバリウム鋼板の特性や施工事例の確認が重要
前述した通り、耐久性が高くメンテナンスが簡単といったメリットだけをみて選択すると、外壁が錆びてしまい後悔することがあります。ガルバリウム鋼板は、絶対に錆びない外壁材ではないという特性を理解していれば、こうした後悔は生まれないでしょう。そのため、ガルバリウム鋼板の特性を事前に確認しておくことはとても大切です。
また、ガルバリウム鋼板の取り扱いは、専門的な技術者が必要なため、施行事例を確認しておくことも重要です。実績や特性を把握したうえで、ガルバリウム鋼板を選択することが、家を長持ちさせるコツでしょう。
定期的なメンテナンスを行う必要がある
ガルバリウム鋼板は高い耐久性をもっていますが、よい状態をキープするためには定期的なメンテナンスが欠かせません。台風や強風で外壁にキズや凹みが付いた場合には、なるべく早くメンテナンスを行い、キズによる錆の発生を防ぐ必要があります。
また、ガルバリウム鋼板の外壁材に長期保証をつけている建築メーカーは、定期的なメンテナンスを行っていることを条件としている場合が少なくありません。自身では気が付かない劣化を見つけたり、長期保証の条件を満たしたりするためにも、定期的にメンテナンスを行うようにしましょう。
まとめ
ガルバリウム鋼板の外壁材は、耐久性やメンテナンス頻度、デザイン性などから、年々注目度が高まっています。さまざまなメリットがありますが、キズや凹みが付きやすいなどのデメリットもあるため、外壁材を選ぶ場合は、素材の特性やメリット・デメリットなどを理解する必要があるでしょう。
ただし、すべてを自身で調べ、理解するのは、時間と労力がかかります。家を建てたいと思ったら、建築メーカーなどを活用して、効率よく情報収集しましょう。
執筆年月日:2024年11月